いづくにか(高市連黒人)

短歌 に関する記事

いづくにか 船泊てすらむ 安礼の崎
漕ぎ廻み行きし 棚無し小舟 高市連黒人

■ 訳

(あの舟は)今頃どこに停泊しているのだろうか。
安礼の崎を迂回していった舟棚も無い小さな舟は。

■ 解説

「船泊てすらむ(ふなはてすらむ)」は停泊しているのだろうか(”らむ”は現在の推量:今頃〜しているのだろう)、「安礼の崎(あれのさき)」は現在の愛知県東部の崎(場所の特定はできていませんが、愛知県豊川市周辺の崎であったのだろうと考えられています)、「棚無し小舟(たななしをぶね)」は船棚の無い舟、をそれぞれ意味します。

■ この詩が詠まれた背景

この詩は万葉集 第一巻(雑歌 58首目)に収録されています。
題に「二年壬寅太上天皇幸于参河國時歌」(大宝二年(702年)、持統上皇の三河国御幸に従駕した時詠んだ歌)とあります。
ちなみに、続日本紀によれば、十月甲辰 太上天皇幸參河國とあることから、十月十日(西暦702年11月8日)に御幸されたようです。

■ 豆知識

作者は高市黒人(たけちのくろひと)で飛鳥時代の歌人です。
万葉集には18首の和歌が載せられており、勅撰和歌集である玉葉和歌集、新拾遺和歌集にも1首載せられています。

黒人の残した詩は全て旅先で詠まれた歌です。
万葉集には大和、山城、近江、摂津、尾張、三河、越中で詠まれた詩が載せられています。

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