■ 解説
「恋繁しゑや(こひしげしゑや)」は恋が多くて煩わしい、「かくしあらば」はこのようなことになるならば、「ならまし」はなれればいいのに(「まし」は助動詞)、をそれぞれ意味します。
■ この詩が詠まれた背景
この詩は万葉集 第五巻(雜歌)819首目に収録されています。
以前紹介した、大宰帥であった大伴旅人の屋敷で行われた宴会の席で詠まれた詩です。
■ 豆知識
作者は大伴三依(おおとものみより)で大納言であった大伴御行(おおとものみゆき)の子です。
父である大伴御行は竹取物語で竜の頸の珠を取りに行った「大納言大伴御行」のモデルとしても知られています。
恋に煩わされていると詠まれたこの詩ですが、大伴三依は長屋王の娘である賀茂女王(かものじょおう)と恋仲であったことが知られています。
長屋王は藤原四兄弟の陰謀により、神亀六年二月十二日(729年3月16日)謀反の疑いをかけられ、妃である吉備内親王とその子らとともに自尽させられました。(長屋王の変)
刑が執行された記録がないため、賀茂女王が助命された可能性は高いと考えられますが、少なくとも大伴三依との仲は引き裂かれたものと思われます。
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