■ 解説
「散らくはいづく(ちらくはいづく)」は散ってきたのはどこ、「しかすがに(然すがに)」はそうですがしかし、「この城の山に」はこの城(のある)山に(大城山に築かれた大野城のこと)、をそれぞれ意味します。
■ この詩が詠まれた背景
この詩は万葉集 第五巻(雜歌)823首目に収録されています。
以前紹介した、大宰帥であった大伴旅人の屋敷で行われた宴会の席で詠まれた詩です。
この詩は前回の詩の返歌になります。
「雪は降りつつ」と詠んでいますが、これは実際に雪が降っているわけではなく、前回の「天より雪の 流れ来るかも」に対する冗談として詠まれたものです。
■ 豆知識
作者は大伴百代(おおとものももよ:大伴百世とも)で中納言であった大伴牛養(おおとものうしかい)の子です。
この詩を詠んだ時、百代は大宰大監でしたが後に豊前守になっています。
大伴旅人の異母妹である大伴坂上郎女(おおとものさかのうえのいらつめ)との恋歌が残されています。(万葉集 第四巻 559〜562首目)
この詩の題に「大宰大監大伴宿祢百代」とあるため、同じ頃に詠まれた詩と思われます。
大伴坂上郎女は旅人の妻が亡くなった後、旅人のいる大宰府に身を寄せ、家刀自(現在の主婦のようなもの)として身の回りの世話から子供たち教育など、大伴一族の中心的存在として家族を支えていたようです。
■ 関連地図
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