春の野に(算師志氏大道)

短歌 に関する記事

春の野に 鳴くや鴬 なつけむと
我が家の園に 梅が花咲く 算師志氏大道

■ 訳

春の野に鶯が鳴いている。
(鶯に)寄っておいでよと、庭園の梅の花が咲き招いているよ。

■ 解説

「なつけむと(懐けむと)」は懐かせようと(「む」は意志の助動詞:〜しよう)、を意味します。

■ この詩が詠まれた背景

この詩は万葉集 第五巻(雜歌)837首目に収録されています。
以前紹介した、大宰帥であった大伴旅人の屋敷で行われた宴会の席で詠まれた詩です。

■ 豆知識

作者は志紀大道(しきのおおみち)です。
藤氏家伝には暦算の名手として記述されています。

算師とは物数を勘計することを生業とした役職で、主に租税の集計などを行っていました。
当時の教本には唐から伝わった九章算術(きゅうしょうさんじゅつ)が用いられたようです。
なお、九章算術は漢王朝の時代、1-2世紀頃に書かれた書物で、3世紀には魏の劉徽(りゅうき)により円周率の近似値が3.14であることが注釈として記述されており、これは当時、世界最高の精度を誇っていました。
ちなみに日本で数学が発展するのは江戸時代に入ってからで、それまでの間停滞を続けていました。

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