梅の花(大隅目榎氏鉢麻呂)

短歌 に関する記事

梅の花 散り乱ひたる 岡びには
鴬鳴くも 春かたまけて 大隅目榎氏鉢麻呂

■ 訳

梅の花びらが絶え間なく散っている丘のほとりには、春を待ち望んだ鶯が鳴いているのだなあ。

■ 解説

「散り乱ひたる(ちりみだひたる)」は散り乱れている(「たる」は完了)、「岡び(をか傍)」は丘のほとり、「春かたまけて(はる片設けて)」は春が来るのを待って、をそれぞれ意味します。

■ この詩が詠まれた背景

この詩は万葉集 第五巻(雜歌)838首目に収録されています。
以前紹介した、大宰帥であった大伴旅人の屋敷で行われた宴会の席で詠まれた詩です。

■ 豆知識

作者は榎氏鉢麻呂(えのうじのはちまろ)です。
本姓は「榎井」、「榎本」、「榎室」などの可能性が考えられていますが、詳細は分かっていません。

榎氏鉢麻呂は大隅国(おおすみのくに)の目(さかん)ですが、当時の大隅国とは現在の鹿児島県の東半分(大隅半島)に当たります。
続日本紀によれば、養老四年二月二十九日(720年4月15日)には当時地方豪族である隼人が朝廷に反旗を翻し、大隅国守の陽侯麻呂(やこのまろ)を殺害、同年三月四日(720年4月19日)、大伴旅人が征隼人将軍に任ぜられています。
八月十二日(720年9月22日)勅命によって帰京した旅人に代わり、後事を託された副将軍の笠御室(かさのみむろ)と巨勢真人(こせのまひと)を相手取り、隼人は1年以上戦い続けましたが、最終的には朝廷の大軍勢に制圧され、養老五年七月七日(721年8月8日)、斬首および捕虜となった隼人の総数は1400人であったと記されています。

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