■ 解説
「み山(深やま)」は深い山、「はたつもり(畑つ守)」はリョウブ(令法:リョウブ科の植物でお茶や食用にもなります)、「積もりにけらし(つもりにけらし)」は積もってしまったらしい、「逢ふよしもなし(あふ由も無し)」は逢う方法もない、をそれぞれ意味します。
■ この詩が詠まれた背景
この詩は古今和歌六帖 第六巻(はたつもり)(259コマ目) に収録されています。
古今和歌六帖は国内初の類題和歌集で、題材ごとに分類されています。
■ 豆知識
作者は分かっていません。
この詩が載せられている古今和歌六帖についても、誰が編纂したかも分かっていません。
なお、現存する古今和歌六帖はすべて藤原定家が残した写本の写本です。
能因集には能因法師がリョウブについて詠んだ句もあります。
「いまよりは み山がくれの はたつもり 我うちはらふ 床の名なれや」
この詩は、はたつもり(畑つ守)が身を隠すものであるとして詠んだ詩で、今回の詩との共通点を見いだせます。
リョウブ(令法)は俳句では春の季語として詠まれます。
リョウブの新芽は甘みがあるため、令法飯として食べられたり、令法茶として飲用されます。
また数年に一度咲く花には大量の蜜が含まれており、ミツバチが溺れるほどだと言われています。
樹皮は薄く剥がれて見た目も美しく、乾燥地ややせ地にも強いため、公園などに植林されることもあります。
ちなみに、古今和歌六帖の注釈本である古今和歌六帖標注(六巻 60コマ目)には、はたつもりは山茶科であると記されています。
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