鷲の住む(よみ人しらず)

今様 に関する記事

鷲の住む 深山には
なべての鳥は 棲むものか
同じき源氏と 申せども
八幡太郎は おそろしや よみ人しらず

■ 訳

鷲が住む奥深い山には、普通の鳥なら(怖くて)住まないよ。
同じ源氏と言ったって、義家公は怖いなぁ。

続きを読む

いろはにほへと(よみ人しらず)

今様 に関する記事

いろはにほへど ちりぬるを
わかよたれぞ つねならむ
うゐのおくやま けふこえて
あさきゆめみし ゑひもせす よみ人しらず

■ 訳

(どんなに)華やかで美しいものでも(いつか必ず)滅びてしまう。
私も誰でも(すべてのものは)、永遠に存在し続けることはできない。
森羅万象の全てが辿り着く先の彼岸を、今日越えて、(私はもう)儚い夢を見ることも、惑うこともない。

続きを読む

春のやよいの(慈円)

今様 に関する記事

春のやよいの あけぼのに 四方の山べを 見わたせば
花盛りかも しら雲の かからぬ峰こそ なかりけれ

花たちばなも 匂うなり 軒のあやめも 薫るなり
夕暮さまの さみだれに 山ほととぎす 名乗るなり

秋の初めに なりぬれば ことしも半ばは 過ぎにけり
わがよ更けゆく 月影の かたぶく見るこそ あわれなれ

冬の夜寒の 朝ぼらけ ちぎりし山路は 雪ふかし
心のあとは つかねども 思いやるこそ あわれなれ

長生殿の うちにこそ ちとせの春あき とゝめたれ
ふろうもんおし たてつれば としはゆけとも おひもせず 慈円

■ 訳

春、三月の夜明け前に、周りの山々を見渡せば、桜は満開で雲のかからない峰もない。
(夏、)橘(こうじみかん)の白い花の匂い、軒に咲く菖蒲も香る。夕暮れ時の五月雨が降る中、山ではホトトギスが名乗るように鳴いている。
秋、始まりの頃になれば、今年も半分過ぎたと感じる。自分の人生も月の光が西に沈む姿に照らし合わせてしまってむなしく思う。
冬、一層寒くなった明け方、細かく途切れた山道は雪が深く積もっている。心に足跡は残らないけど、気配りこそが人情ってものだ。
長生殿の中は悠久の春と秋が続いている。不老門を押し開けたなら、年を重ねても老いはしない。

続きを読む